リターンフィルタとは何か
油圧システムにおけるリターンフィルタとは、アクチュエータやバルブなどを通過してタンクへ戻る作動油をろ過するためのフィルタです。油圧回路ではポンプから送り出された作動油が各機器を駆動し、その後タンクへ戻ります。この「戻りライン(リターンライン)」に設置されるのがリターンフィルタです。
油圧機器内部では金属摩耗粉やシール材の微粒子などのコンタミネーション(汚染物質)が発生します。これらをタンクへ戻る前に除去することで、システム全体の清浄度を維持するのがリターンフィルタの基本的な役割です。
リターンフィルタの主な役割
1. システム全体の清浄度維持
油圧システムでは作動油の清浄度が性能や寿命を大きく左右します。リターンフィルタは、回路内で発生した異物をタンクへ持ち込まないようにすることで、油の汚染拡大を防ぎます。
タンク内の油が汚染されると、ポンプ吸入側から再び異物が循環し、システム全体に悪影響を及ぼします。リターンフィルタはこの「汚染の再循環」を防ぐ重要なポジションにあります。
2. ポンプや精密機器の保護
油圧ポンプやサーボバルブなどの精密部品は、微細な異物に非常に敏感です。リターンフィルタによってタンク内の油を清浄に保つことで、次の吸入サイクルでポンプへ入る油の品質を確保します。
特に高圧・高精度な油圧システムでは、わずかな異物でも内部摩耗や作動不良の原因になります。リターンフィルタは間接的にポンプや制御機器の寿命延長に貢献します。
他のフィルタとの違い
サクションフィルタとの違い
サクションフィルタはポンプ吸入側に設置され、比較的粗いろ過を行います。一方、リターンフィルタはポンプ通過後の油をろ過するため、より高いろ過精度が求められることが一般的です。
サクション側で目詰まりが起こるとキャビテーションの原因になるため、あまり細かいろ過はできません。そのため、主な清浄度管理はリターンフィルタが担うケースが多いです。
プレッシャーフィルタとの違い
プレッシャーフィルタはポンプ吐出側に設置され、高圧状態でろ過を行います。高精度なろ過が可能ですが、コストや耐圧設計が必要になります。
これに対し、リターンフィルタは比較的低圧で設置できるため、コストパフォーマンスに優れ、システム全体の清浄度管理に適した位置にあります。
設計・選定時のポイント
ろ過精度(ミクロン値)の選定
リターンフィルタの選定では、システムが要求する清浄度に応じたろ過精度(例:10μm、25μmなど)を決定します。精度が高いほど微粒子を除去できますが、圧力損失や目詰まりリスクとのバランスを考慮する必要があります。
流量と圧力損失の確認
最大リターン流量に対して十分な通油能力を持つフィルタを選ばなければなりません。流量が不足すると背圧が上昇し、シール部からの漏れや性能低下の原因になります。
また、目詰まり検知用の差圧インジケータを備えたタイプを選定すると、メンテナンス時期の管理が容易になります。
まとめ
リターンフィルタは、油圧システム全体の清浄度を維持し、ポンプや精密機器を保護する重要なコンポーネントです。回路内で発生した異物をタンクへ持ち込ませないことで、汚染の再循環を防ぎ、システム寿命の延長と安定稼働に貢献します。
適切なろ過精度、流量能力、メンテナンス性を考慮して選定・管理することが、信頼性の高い油圧システムを構築するうえで不可欠です。